皆様は目黒区のDカフェをご存じですか?
Dカフェは目黒区を中心に16ヵ所ある、介護経験者と専門職が運営する「認知症カフェ」
です。認知症に関心のある方、認知症の方、介護をされているご家族の方などが、
コーヒーなどを飲みながらゆっくりと語り合い、共に考え、友達づくりをすることも
できるところです。
今回はNPO法人Dカフェnetの理事として、精力的にボランティア活動をされている
田邉(たなべ)さんに話を伺いました。
(包) 田邉さんは長年地域でボランティア活動をされていますが、始めたきっかけについて
教えて下さい。
(田) まだ定年前の現役サラリーマンの時、目黒区報で「介護者応援ボランティア養成講座」
の記事を読んだのがきっかけですね。もう11年前になります。講座受講後、職場に近かった
北部地区にある介護者の会のお手伝いをするようになり、その後、Dカフェの創設者である
竹内さんから声を掛けられて、活動に参加するようになりました。今は主にDカフェ「都立
大学」「東が丘」「せらぴあ」の運営に携わっています。
(包) 定年前から既に地域活動に参加されていたのですね。仕事もあって忙しかったと思い
ますが、あえて高齢者支援の分野を選ばれた理由があるのでしょうか?
(田) 退職後に初めて地域に関わるのは厳しいだろうと思って、早目に活動を始めました(笑)。
徐々に軸足を仕事から地域活動に移してきた感じです。
高齢者支援を選んだ理由としては、知人が急に要介護状態となり、介護するご家族の
苦労を目の当たりにしたことが印象的でした。自分でも何かできることは無いかな、と
その時に感じたのを覚えています。
(包) ボランティア活動の他に、趣味や息抜きに行っていることはありますか?
(田) 体を動かすのが好きなので、フットサルやジョギングを定期的に行っています。
コロナ禍になってからは、天気が良い時の散歩も増えましたね。健康のためにと頑張り
すぎるのではなく、自分にとって楽しい事を行えばストレスも自然に解消されます(笑)。
(包) 日頃の活動で、田邉さんが喜びややりがいを感じる時はどのような時ですか?
(田) 私は当日の参加者が何人来たという人数よりも、むしろ一人でも「今日はDカフェに
参加して本当に良かった」と笑顔を見せて下さる方がいることが大切だと感じています。
その方が次回も参加して下されば、なおさら嬉しいですね。
(包) 目黒区で Dカフェが始まって8年近くになると思います。当初から活動されてきた
田邉さんから、まだDカフェに参加したことが無い方に対して、どのような方が参加した
ら良いのか、アドバイスをお願いします。
(田) Dカフェの「D」は『誰でも』のDでもあるので、介護をしていない方でも、元気な
方でも良いのですよ(笑)。
介護は突然やってくるものだから、皆さんほぼ何の準備も無く、慌ててあれこれ決断
せざるをえない。それで後で後悔してしまう方もいる。そうなる前に、介護についての
知識を得ておくこと、介護に関わる様々な「人」と知り合っておくことが大切だと思い
ます。そのための情報提供の場がDカフェです。
そのためだけではなく、「人と交流できる場所に自分が参加する」というのは、人が
孤立しがちな今の世相においても良いことだと思います。
Dカフェnetの理事として活躍する田邉さん。
現役時代の知識を生かしたトークと優しい笑顔で、
相談者からも好評を得ています。
Dカフェには医師、看護師、ケアマネジャーなど専門職種の方も参加される事があり
ます。普段余り接点の無い方から専門的な話を聞くことができるのです。コンサルティ
ングではないので必ず解決できるとは限りませんが、話をするだけでも得るものは多い
と思いますよ。
例えばDカフェにて「良いケアマネジャーってどうやって探せば良いのですか?」と
よく質問を受けます。それについて包括の窓口では具体的な情報提供が難しいと思います
が、Dカフェにはケアマネジャーが来ていることもあるので、直接助言を受ける事ができ
ます。他の家族から具体的な情報を聞くこともあります。
また、ある方が家族の認知症について相談に来た時には、丁度開催していたオンライン
相談にて医師から助言を受け、その後ケアマネジャーと包括支援センターで施設入所に
向けた手続きを進めるなど、具体的なアクションにすぐ繋がったこともありました。
私自身は高齢者の認知症は自然なことなので、必要以上に問題視しなくても良いのでは
ないかと感じています。本人ができなくなったことを家族が責めるのではなく、できている
事に目を向ける。そのようにもっと気楽にとらえて、本人・家族どちらも穏やかに暮らして
いければ良いですよね。
(包) 最後に、包括支援センターについてもコメントをお願いいたします。
(田) 私たちはボランティアなので何の権限も無く、個別相談に対してどこまで踏み込んで
良いか迷う時もあります。一方で、Dカフェは相談者が気楽に相談できる場であり、私たち
も一緒に問題を考えられる存在でもあることから、包括とDカフェが相互補完する事で、
相談者にとって実のあるアイデアをお伝えする事が出来れば良い、と考えています。
これからもよろしくお願いします。
※ Dカフェについては、『介護者がつくる認知症情報誌 でぃめんしあ』(年2回発行)
に詳細が記載されています。
目黒区内の各住区センターや包括支援センターなどで無料配布しておりますので、
関心を持たれた方はぜひご一読ください!